「薬剤師は薬を飲まない」という本を褒めてみる

例えばある患者さんが
高血圧や高血糖、その他多くの疾患で様々な診療科から
多くの種類の薬を貰っているとします。

そこで薬剤師の求められる職能としては

処方された薬の意図は何か汲み取る
飲み合わせに問題ないか、重複してないかなどをお薬手帳などで確認する

という事を行うと思います。

後発品も続々と登場している中
後発品へ変更を考える薬剤師もいるでしょう。
それが患者さんの負担軽減のためであり
医療費抑制のためのもなります。



薬剤師としては患者さんに薬を適切に服用してもらい
後は患者さんの健康を願うばかりです。
多少薬の種類が多くても各疾患があり
それに対応する薬を処方する必要がある以上、致しかたありません。


しかしそれらを服用する事が薬理学的に問題ないとしても
果たして本当にそれは正しい事なのでしょうか。



近年アンチ医療の本が多く出回っています。
その中でも薬剤師の立場からして非常にセンセーショナルな本が
宇多川久美子著の「薬剤師は薬を飲まない」という本です。

この本には
薬とプラスチックを同列のものと考えたり
酵素が云々と言ってみたり
タミフルが異常行動の元凶だと言ったりするトンデモな本です。


この本の悪い点は様々な有識者が意見を述べておりますので
話題が過ぎた今頃になって改めて書くつもりはないのですが
ひとつだけ言わせてもらうと個人的にはこの著者の方向性には賛成です。


ではその方向性とは何か?

それは薬中心の健康保持から、薬に頼らない健康管理の意識を高める事。
そしてその結果多くの薬を飲む事を必要としなくてもいいようになるべきと考えます。



例えばある患者さんが
循環器の薬を飲み始める事になったとします。
恐らく血液検査などで基準値を上回っているデータが出たため
薬を飲み始めるのでしょう。
そしてもし飲み始めてしばらく経っても改善出来なければ更に薬が追加か増量されます。

ではこの後本当に患者さんが行うべき事は検査値を平均値になるのを目標に薬を飲み続ける事なのでしょうか。
そしてもし平均値まで下がっても「念のため飲み続けようか」と言われる人もいると思いますがその必要は本当にあるのでしょうか。

個人的にはこの二つが問題であり
宇多川氏の考える方向性に賛同する所でもあります。


大切なことは薬を飲まなくても済むような生活習慣に変えていく
「意識」を作り「実際に行動する事」だと思います。
そしてそれに伴って薬を減らしたり無くしていく過程を大切にすべきです。

どうも薬の効果には医者・患者共に関心があるようですが
生活習慣に関しては関心が向けられない事も多い気がします。
例えば糖尿病薬の使用に関しては
「糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行なった上で効果が不十分な場合に限り考慮すること」
と添付文書にもしっかり書かれてありますがもはやこれはポーズでしかありません。

血圧などに関しても
「この薬をのんでもなかなか血圧が下がらない」と患者さんが言って医者が薬を変えたとします。そして血圧が下がったら医者と患者さんで喜びます。そこで完結です。
関心があるのはいつも薬になってしまいます。



「薬剤師は薬を飲まない」の中では
「薬に頼るばかりが健康ではなく自分で健康を心掛けなければならない事の重要性」
を改めて説くための「薬剤師は薬を飲まない」なのではないかと思います。

薬を扱う仕事なので当然ではありますが
薬剤師業務に置いて中心は薬と患者さんになってしまいます。
しかし本来は患者さんと健康にスポットライトを当てるべきであり
身体に異常があるから薬を飲むのならば薬を飲まなくて済む状態が一番いいはずです。


宇多川氏は「薬とは何か」というものを通じて
実は患者さんではなく今の薬剤師に対して警鐘を鳴らしているのではないでしょうか。



しかしこの本の大罪は
薬を飲むこと全てが悪行と決めつけ
そして薬を飲む事自体を全否定し
何より薬の否定の仕方が荒唐無稽である事は非常に問題です。
なぜならこの本の様な持論により薬の正当性を誤った形で否定する事は
薬に頼らない医療を考える人達の足を大きく引っ張る事に繋がるからです。

個人的にも薬を減らす事と予防医学についての必要性が高いと考える派ですが
はっきり言って迷惑ですし全ての薬剤師を代弁して言っているようなタイトルにも
少々憤りを感じます。

とにかく一番大切な事は
個人の健康管理に対する意識を薬だけに留めない事と
それと同時に必要である薬を飲む事の大切さを伝える事。
それにプラスして、せっかく薬局でも簡易検査の幅が広がりつつあるので
薬剤師から予防医学の大切さをもっと広めて行けるような環境を整える事だと思います。


それと何気に重要な事なのですが
例えば検査値がある程度正常に戻り健康管理に努めるようになった人でも
「念のため」と薬を飲むことを継続している人も少なくないと思います。
そういった場合に薬剤師側からドクターに薬の継続を止める事をしっかり主張できる時代にならなければなりません。
やはり在宅医療が今後中心になると考えると
多くの薬を飲むことは患者さんのコンプライアンスを下げる要因になりますし
医療費もどんどんかさんでしまいます。
ジェネリックへ変更するだけでは到底追いつきません。

今の日本の薬剤師ではなかなか処方上問題ない事に対してドクターに主張しづらい現状にあると思うのですが
今後在宅医療を期にもっと踏み込んだ薬剤師の職能を発揮しなければならないでしょう。


最後にお詫びですが
偉そうな事を言っておきながら
「薬剤師は薬を飲まない」は買ってません。
すみませんでした。


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