医薬分業の廃止は医療費削減になる。でも進まない理由。



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日本薬剤師会の山本信夫会長は12日の定例記者会見で、11日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で日本医師会の中川俊男副会長が、「医薬分業は限界に来ている」「院内に回帰すべき」などと発言したことに対して、「承服できない」とコメントした。
【日薬】山本会長「承服できない」‐日医・中川氏の分業否定発言に



医薬分業に対して医師会副会長が

「院内に回帰すべき」

と発言しました。

でもこれって病院等の医療機関側にとっても本当に歓迎すべき事なのでしょうか。


そこで今回は

「もし医薬分業が廃止されたら」

という事について考えてみたいと思います。

そしてここでは医薬分業によるメリットはあえて無視して考えていきます。





もし医薬分業が強制廃止され

全ての医療機関で院内処方が義務になった場合でも

当然ながら薬剤師の服薬指導は必須になります。

「医薬分業を廃止にして調剤・投薬が事務員になりました」

では意味がありませんからね。

病院としては薬剤師を新たに雇う必要があります。


しかし今の売り手市場とは違い

分業が廃止されれば17万人をこえる薬局従事者が路頭に迷う事になりますので

一気に供給過多になります。

すると年収300~400万円では見向きもされなかった病院でも

薬剤師確保が可能になる確率は格段に上がります。

ですから今よりローコストで薬剤師を雇う事が可能となるため

雇用の面に関してはそこまで大きな問題に至らなそうです。

(それでももちろん薬剤師不足の地域もあるでしょうが)


ただし問題はその薬剤師を雇う事によって

医療機関にとってどれだけのメリットがあるのかが論点になります。



実際に院内処方でも薬剤師による技術料は発生します。

ただし院内処方は内服の調剤料が1処方につき9点と定額になり

薬剤服用歴管理指導料なども当然ありません。

一般的な処方で4種類の内服薬を28日処方する場合では

おおよそ72点になります。かなり安いです。

もちろん単純計算で仮に1日100枚の処方箋がある所ならば

1日で7万2千円前後の技術料が見込まれますので

仮にそれが20日継続したとしても150万円近くの技術料になります。

これならば薬剤師を安く雇えるとすればそこそこ利益がありますので

まあありえない話しではありません。

しかし現状、処方箋料は68点です。
(もちろん全て68点ではありませんが)

言葉は悪いですが

「処方箋を出すだけ」で680円貰えます。

かたや薬剤師を雇って服薬指導をしても720円です。

おまけに抱える在庫リスク

薬剤師を雇うための給与

を考えれば自分ならば院内に戻したいとは思いません。



では次に実際に院内処方になった場合の

「モノ」の問題を考えます。

医薬分業率は7割を越える現状において

新規開業もしくは改装工事をした時点で

院外処方を選択している医療機関は決して少なくありません。

つまり「院外処方を前提とした創りの建物」である医療機関も相当多いはずです。

すると新たにそれなりの投薬スペースを確保する必要があり

改修工事が必要になる所もあるでしょう。



またこれまで院外処方だった分の薬剤も確保しなければならないため

薬剤棚や分包機の増設も考慮しなければなりません。

当然「薬」の購入額も跳ね上がります。

微々たる薬価差益の代わりにデッドストックも増えます。

まあこの辺は薬剤師と相談しながら在庫リスクが出ない様に調整できるのも

院内処方のメリットかもしれませんけどね。

しかしその他にも薬袋の紙代やインク代に加え

分包紙などのランニングコストもバカになりません。

そうなるといずれにしても「モノ」にかけるコストが

けっこうな金額で発生するのは間違いありません。




ただし分業廃止が悪い事ばかりではありません。

例えばジェネリックの利用促進を考えてみましょう。


今では

「後発品を使うなんてけしからん!」という医師も一定数存在し

その弊害は否応なしに薬局への調剤報酬へと影響を及ぼしています。

しかし院内処方になればこれが一発で解決します。

おそらく後発品体制率は80%を余裕でクリアする事でしょう。


また、患者さんが「後発品は嫌だ」と言っても

「医師の指示なので」の一言で済みます。

自己負担ゼロだからと言って理不尽に先発品を選ぶ方もいますが

そんなストレスからも解消されます。

そして医療費の薬剤費も下がり一石二鳥です。



そして疑義照会においても

医師と病院薬剤師の連携が今以上に密になりますので

疑義照会不要のケースを院内で作成する事も容易になります。

これまでは分かり切っている回答だとしても

逐一疑義照会が必要だったものが簡略化される事でしょう。

疑義照会の簡略化は患者さんの待ち時間の短縮にもなります。

(トータルの待ち時間は伸びるかもしれませんが)


また院内処方のメリットの代表であるカルテの閲覧も

病名の確認などで役立ってきますし

検査値を見る事でより高度な服薬指導が可能になるかもしれません。



そして医療費の問題です。

2016年度の調剤医療費における技術料は1.8兆円となりますから

もし分業が廃止されれば丸々1.8兆円の医療費削減です。

そしてさらに処方箋料もカットできますから

全国の処方箋枚数約8億枚である事を考えれば

こちらもざっくり4~5000億円程度の削減になります。

ただし技術料のコストは院内処方でも発生しますので

この4~5000億円はほぼチャラです。


もちろんここでは調剤薬局の薬剤師が関与する事による

医療費削減等々によるメリットは一切無視していますので

当然単純な比較にはなりませんし荒い計算ですが

形上は約1.8兆円程度の医療費削減となりそうです。

医療費が40兆円をこえる時代なのでその約5%に相当します。




つまり話をまとめると

患者さんに対して薬局薬剤師の介入のメリットを考えなければ

医療費削減が可能です。

そして患者さんの自己負担額も減ります。

服薬指導に関するメリットもあります。



しかしこれまで院外処方だった病院からすると

院内処方に戻す事は正直歓迎しないのが本音でしょう。

それならば処方箋を出して点数を貰った方が

めちゃくちゃコスパが良いです。

今さら改修工事をする病院なんてほぼ皆無でしょうし

在庫を抱え薬剤師を雇い諸々のリスクを抱える。

自分が経営者ならば院内処方に戻す判断はまずしませんね。


でもどうして医師会は平然と公の場で

「院内に回帰すべき」などと言えるのでしょうか。

それはこの言葉を発した

医師会副会長の中川俊男だからこそ言える発言だと考えます。


中川氏が理事長を務めるのは

北海道札幌市の脳神経外科の病院です。


そしてその病院を見てみると

周りに調剤薬局らしきものが存在しないんですよね。

つまり中川氏が理事長を務める病院は

院外処方ではない可能性が高いです。

少なくともグーグルマップで見る限りは門前薬局ではありません。


つまりもともと院内処方である病院の立場と

すでに院外処方に出している病院の場合

医薬分業の在り方に関するスタンスというのは

大分温度差があるのではないかと思います。



そして分業率が7割を越える時代において

病院などの医療機関が多大なコストをかけて

医薬分業を見直すべきという考え方は

病院側にとっても本当に正しいと言えるのでしょうか。



ただ調剤薬局を批難するためだとしても

「院内に回帰すべき」という発言は悪手だと思うんですよねえ。




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No title

院内処方でデッドストックなんてありえないでしょう。
動かない薬を処方すればいいんですから。

無知なので分からないのですが、病院では出ないんですか?
調べた限りではデッドストック出てるみたいですが
あと、患者に処方すればデッドストックにならないって、多くの病院が、そんなことをしてるんですか?
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