「院外処方は院内調剤の3倍のコストがかかる」のおかしな点



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「院内と院外処方ではコストに3倍の開きがある」

という事が話題となっていますが

この比較には問題があると考えます。


まず1点目は院内調剤の現状についてですが

この件に関してはそもそも前提がおかしい議論です。


ご存知の方のも多いでしょうが

院内調剤の実態としては事務員だったり看護師だったりが

調剤・薬の受け渡し(投薬ではない)を行っている所も決して少なくありません。

先日行われた行政事業レビューでも

「調剤料につきましては院内の場合、外来は9点なんですけれども、ここについては実施者が薬剤師か否かに関わらずということになっております」

と、実態として非薬剤師の調剤行為が公になっています。

ただ、これって根本的におかしい話しだと思うんです。

そもそも病院での院内調剤は薬剤師が不在でも

いつから当たり前に成り立って良いものになったのでしょう



現在一般病院の場合の薬剤師配置基準によると

「処方箋枚数70枚につき薬剤師が1人」と設定されています。

ただはっきり言って処方箋70枚を薬剤師1人でさばくのは

実質かなり厳しいですよね。

まあこの問題に関してはさておき

実態としては薬剤師がゼロで処方箋をさばいてある現状があるのも事実です。

となると「院外・院内のコストの差額が3倍である」

という主張を通したいのであれば

今の不適切な薬剤師の配置基準すら満たしていない状況を改善し、はじめて「院内」と「院外」のコストの差に言及するべき

だと思うんです。

まず問題提起する場所は病院の無資格調剤でしょう。

それを「薬剤師不足のため仕方ない」とし

院内調剤で無資格調剤が慢性的に行われているというのは目を瞑り

かたやコストの差の比較対象とするのは前提からしておかしいです。


そしてもう1点。

今世の中の動きとして門前薬局の形式は良しとされていません。

面分業の薬局が善とされています。

「門前からかかりつけへ、そして地域へ」という厚労省が設定した

患者のための薬局ビジョンからも

そして昨今の診療報酬改定からもうかがえるものになります。

これは時代の流れにおいてもはや逆らえないものなのかもしれません。

ただ

「これからの時代は面分業をスタンダードに構えていきましょう」
「かかりつけを持って薬の一元管理を行い、薬の削減に取り組みましょう」

というスローガンがある中において

そもそも比較すべきものは

院外と院内処方ではなく門前と面分業の薬局だと思うんです。

今や分業率は7割を越えていますし

中規模以上の病院ではさらにその医薬分業の割合は高いです。

しかしいざ調剤薬局のコストが高いとなると

こういう時だけ少数派である3割の院内調剤を引き合いに出す

のはどう考えてもおかしいでしょう。

これからあるべき方向性の真逆を行っています。

それならば

「門前薬局はこれからの薬局ビジョンである面分業と比較して不適切である」

として利益の比較等を行って

門前薬局を批難する方がまだ理屈が通ります。





ただこの議論で一番疑問な事があるんですが

これだけ院外調剤のコストの高さについて議論している中で

誰も医薬分業自体を否定はしていないんですよね。

「医薬分業を廃止せよ」とは言われません。


院外処方にすればそもそも院外調剤のコストはかかりませんし

病院でかかる費用の処方箋料を廃止するだけで

最大で1枚あたり68点も削減できる処方箋料ですから
(処方箋料は68点・40点・30点の3パターン)

これに処方箋枚数8億をかけると約3~5千億円の医療費削減です。

何もしなくてもこれだけの医療費削減が可能となります。

コスパ最強です。

ただ誰も医薬分業自体を否定はしません。

これだけ「院内処方のコストの安さを主張しているのに」です。


つまりこのような議論の識者の方も

医薬分業制度の否定はそもそも頭からないのかもしれませんし

空気を読んでいるだけかもしれません。

まあこの様な場で「医薬分業の廃止」を叫んでも場違いは必至ですからね。


しかし多機能を求められつつある院外調剤と比較して

院内の外来患者への調剤に関して求められているものは変化していません。

その代わりに分業率が右肩上がりになっています。

つまり院内調剤で不可能な事を院外調剤が担ってきた歴史を考えると

単に調剤薬局を叩くのであればまだしも

「院外調剤はコストが3倍である」と言われるのは

院内調剤に戻す気は無い上で

体よく利用されているだけ感が凄いので

決して納得がいかない人も多いのではないでしょうか。




ただ不幸な事に、この「コスト3倍」が与える一般の方への影響は抜群だと思います。



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No title

black様の記事、よく拝見させていただいています。
以下に思ったこと、駄文、散文を書かせていただきます。

2015年前後からの調剤報酬減の流れは、「医療費削減の為に、できることからやっていこう。」という考えがよくよく伝わってきます。企業などでもそうなのでしょうが、「収入を増やして支出を減らす」、これを新規事業、システムの改革で行うのは非常にハイリスクで、サラリーマン役人にとっても手を出すのは難しいのでしょう。そこで出てくるのが「人件費削減」だと思います。これはローリスクで確実なりターンが見込めます。これを持って「経費削減が出来た」とし、出世のための実績としたいのでしょう。

前置きが長くなってしまいましたが、「目標は経費(特に薬剤師人件費)削減、そのために叩きやすいところから叩いていこう」というロジックで考えを詰めていっているので、

>まず問題提起する場所は病院の無資格調剤でしょう。
>そもそも比較すべきものは院外と院内処方ではなく門前と面分業の薬局
>こういう時だけ少数派である3割の院内調剤を引き合いに出す

といった事については触れないですし、たとえ意見が出ても黙殺の姿勢を暗に(明に)示し、タブーの雰囲気を作りたいのでは無いのでしょうか。あくまで会議は経費削減を確認する場所である、と。

お金を出す側の厚労省、保険協会等と、受け取る側の医師会、薬剤師会、介護側での対立構造、そして削減が避けられない状況からの、後者側の予算削減割合の振り分け争い。この問題の中で薬剤師会に力がないがため、院内処方の無資格常態化にも指摘を出来ず、、、、、

削減の続く薬剤師会側は、未だ強い反発も出来ず、このまま下げられそうならまだ下げたい、会議の空気はそういうことになっているのでは無いでしょうか。

また、個別の薬局としては、年々急激にマイナス改定される点数に危機感を覚え、保険に依存しない零売薬局を検討したり、実際に零売店舗が出てきているようです。

医薬分業が時流に乗っかっている時には表出てこなかった様々な問題が、今、減点名目の話のタネとして使われている様子は、この業界にのこれから暗い影を感じずにはいられません。

推奨される仕事だけをして、うまくいく時勢ではなくなっていくかも知れない、零売はそんな時代の収入源の一つになってくれるかもしれない。そう考えると、零売は「儲け主義の尖ったやり方」ではなく、「自衛の為の収入源の一つ」として、広まっていくのかな、とも思いました。

徒然と、思い立った事を書きました。
お目汚し失礼致しました。
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